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<開業準備編>麻酔科医が開業医になってみてわかったこと(その2)立地選び

前回はクリニックのコンセプトについて触れました。

<開業準備編>麻酔科医が開業医になってみてわかったこと(その1) - anes-lab’s blog

今回はクリニック開業の立地選びについて記事にしていきます。

事業による利益の計算について

医療機関は利益を目的とはしてはいけませんが、当然利益を上げなければスタッフを雇用できませんし安定的に医療を供給できなくなってしまいます。そのため利益の上げ方についてしっかりと理解をしておく必要があります。

方程式1「売上 = 診療単価 × 人数」

という方程式が必ず成り立ち、そこから売上原価、物件の家賃やスタッフの給与などを差し引いて利益となります(実際の会計はもう少し複雑です)。

方程式2「粗利益 = 売上 ー 売上原価」

方程式3「利益 = 粗利益 ー 諸経費」

この非常に簡単な方程式を意識して診療するかしないかで、その後のクリニックの安定は大きく左右されます。

保険診療による利益について

我が国は国民皆保険制度が導入されているため、保険診療分野に関しては官が全てをコントロールする計画経済です。

そのため、診療単価を医療者が自由に設定することができないので、方程式1の診療単価についてはほぼ定数としてよいと思います。

方程式1’「売上 = 診療単価(定数) × 人数」

ちなみに各診療科毎に平均診療単価が設定され、それを大きく上回る医療機関へは査察があり指導対象となるということも聞いています。

そうすると、売上をあげるには診療人数を上げていく努力が必要です。

方程式2に注目すると、粗利益の求め方が示されています。一般に医療機関の原価率は10%程度と言われています。仕入れ先の卸会社同士で競わせて少しでも売上原価を下げる努力をしているクリニックは多かろうと思いますが、当院では卸会社とのしっかりした信頼関係を構築するためあえて卸会社を一社へ絞り安定供給の方を優先しています。

方程式2’「粗利益 = 売上 ー 売上 × 売上原価率(約10%で固定)」

そして生み出される粗利益から利益を確保するには諸経費を抑えていく必要があります。しかしむやみやたらにコストカットをするのは得策とは言えません。例えば人件費を削ればスタッフの疲弊や不満に繋がりますし、広告費などの投資を削ればクリニック自体を知ってもらえなくなってしまいます。

方程式3’「利益 = 粗利益 ー 諸経費(過剰に削り過ぎない)」

すると何が見えてくるでしょうか。一般クリニックで安定的に収益をあげるには、診療人数を上げていくのが一番の近道ではないでしょうか。

診療人数を確保する方法

特に私のような落下傘型開業をした場合に、診療人数を確保するには以下の方法が考えられます。

  1. クリニック立地をよくする
  2. 宣伝広告費をかけクリニックの存在を周知する
  3. ひたすら良い診療をして口コミを稼ぐ
  4. 地域の病院や他医療機関との連携

今回はとくにクリニック立地について考察していきましょう。

クリニックの立地条件

これはかなり主観が入ってますが、以下の立地が良いのではと考えます。

  1. 都心部でとくに)駅徒歩5分以内
  2. 近くに強い競合クリニックがない
  3. 近くに大型の住宅施設がある
  4. 高齢化率が著しく進んでいない
  5. (郊外部でとくに)大型ショッピングモール内
  6. 大型スーパーマーケットに隣接

私の場合は、1, 2, 3, 4あたりが合致しており、初月度から多くの患者様に来院して頂きました。それぞれ簡単に見ていきます。

駅徒歩5分以内

とくに都心部では公共交通機関を利用している方がほとんどで、あまり車を使いません。そのため駅やバスターミナルの近くには必ず人の往来が期待できます。

通勤、通学などでクリニックの前を毎日通過するうち、サブリミナル効果的にクリニックの存在が脳裏に焼き付き、潜在的な顧客になってくれる可能性が高くなります。

都心部でも駅から5分も歩けば普通住宅街になるため、往来がとくに多い通りでない限りそういった効果は期待できません。

駅に近いことそれだけで野立て看板や駅看板、電柱広告をだす必要が無くなります。また沿線沿いの他の地域からの患者の流入も期待できます。

私のクリニックはある程度大型な駅(1日平均乗降客数6万人程度)から徒歩1分の立地です。乗降客数が小さな駅や、郊外都市の駅前ではこの戦略は通用しないかもしれませんので注意が必要です。

近くに強い競合がいない

私は前記事でも書いた通り整形内科をコンセプトに開業に至ったので、競合の調査は「整形外科」「ペインクリニック」で行いました。

都市部では診療圏は半径500mと言われますので、開業コンサルのもつ診療圏調査ソフトを使って調べていきました。

私の地域は古くは下町で、ここ10年ほどで大規模マンション群が立ち並ぶゾーンに生まれ変わった経緯からあまりその地域には先行クリニックがありませんでした。加えて、地域の総合病院の整形外科は非常に混雑して3時間待ちは当たり前であることも判明し、これはイケると確信しました。

君子危うきに近寄らず、地域の地盤のある強豪クリニックを見たらその場所はあきらめましょう。まあ業態を変えてゲリラ戦を仕掛ければ、刺し違えくらいはできるかもしれませんが。。

近くに大型の住宅施設がある

大型マンションなどがあれば戸数1000でだいたい2000人は潜在顧客が見込めます。地域の街づくりでマンション群の開発があれば、場合によっては10000人規模になってきます。

戸建てが並ぶ地域ではそうはいきませんし、都心部の戸建て住まいの方は地盤が固く古くからの馴染みのクリニックをすでに持っていることが多いです。

高齢化率が著しく進んでいない

高齢化率が高ければクリニックを利用する顧客が多くなりそうですが、高齢者には変化を嫌う方も多いのであまり新規クリニックにきてくれないかもしれません。

また将来へのクリニックの成長性を考えたときに、患者数の伸び率がすぐに頭打ちになり減少傾向になってしまうかもしれません。

逆に若年層が多ければ、その赤ちゃんが小児になり、高校生になり、結婚して家族が増える可能性も期待できます。

大型ショッピングモール内

これは実体験に基づいていないので話半分で。

ショッピングモールだと大型の駐車場があるのはもちろん、買い物ついでの受診や周知のしやすさと言った利点があります。

またショッピングモールの賃貸契約は1業種1店舗になっているので、競合の流入がほぼ確定的に無くなります。

大型スーパーマーケットに隣接

ショッピングモールと同じ理屈です。

この場合、競合への調査が不可欠です。

都市部+駅前+スーパーマーケットというのもかなり集客力があると思います。

まとめ

今回はクリニック立地選びについて書きました。自分で不動産屋巡りをして調べることもできますが、美味しい物件情報は開業コンサルや大手薬局チェーンなどが持っていることの方が多いです。本気でサーチする場合は、一度相談してみるといいでしょう。